「荒川区個人情報の保護に関する法律施行条例」に反対の討論

私は日本共産党区議会議員団を代表し、議案第51号「荒川区個人情報の保護に関する法律施行条例」に反対の立場で討論を行います。

本条例は、国の「個人情報の保護に関する法律」改正に伴い、区が定めた「荒川区個人情報保護条例」を廃止し、国の法律を施行する条例を新たに定めるものです。

個人情報保護に関して、これまでも法律はあったものの、「オンライン結合の制限」など自治体がより手厚い保護の内容を独自に定める例が多くありました。政府はデータの利活用をすすめるうえで、このような制限が情報の流通や連携の支障となると捉え、自治体の個人情報保護を国と同じレベルとする改正を行いました。国と自治体の個人情報保護制度が一元化され、自治体にとっては制度の緩和に他なりません。

荒川区の「個人情報保護条例」も、「本人からの直接収集」を原則とするなど、法律よりも一部手厚い内容で条例を定め運用されています。しかし、新たな「法律施行条例」ではそうした記述はなく、法律では「偽りその他不正の手段により取得してはならない」とされるのみです。委員会質疑では「他の規定でカバーされる」との答弁でしたが、プライバシー権の後退となる懸念は晴れません。

また、改正法では、自治体が保有する個人情報を「個人情報ファイル簿」として作成、公表することが義務付けられています。これにより、どの自治体がどんな個人情報を持っているのか、民間事業者等が確認できることとなり、さらに「匿名加工情報」を提供する仕組みも定められています。区は当面、「匿名加工情報」の取り扱いは行わないとしていますが、自治体が保有する個人情報をビックデータとして放出、流通させる仕組みの中で、今後、国からの求めがあった場合拒否することができるのでしょうか。

制度の緩和ではなく、自己情報コントロール権の確保、形だけでない本人同意の方法、忘れられる権利、プロファイリング規定など、挙げられた課題に対する本気の解決が、何より求められています。

また、個人情報をまもるための審議を行う、国の個人情報保護委員会が、利活用の円滑化のため自治体に助言・指導、勧告できるとされたことは、本末転倒とも言えるものです。区の個人情報保護審議会への諮問は「個人情報の適正な取扱いを確保するために特に必要であると認められるとき」に限定され、これまでより扱う範囲が狭くなります。所管のみなさんが、出来る限り現在と同程度となるよう考えられたことは重要であると思いますが、改正の趣旨を考えれば容認できず、議案第55号「荒川区個人情報保護運営審議会条例等の一部を改正する条例」についても反対とすることを申し上げておきます。

本来、個人に関する情報は、本人以外にむやみに知られることのないようにすべきものです。個人情報は、「個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきもの」であり、プライバシーを守る権利は、憲法が保障する基本的人権です。個人情報の保護については、個人の権利を明確にし、プライバシー権を拡充することこそが必要です。荒川区独自の「個人情報保護条例」を廃止、国と自治体の個人情報保護制度を一元化することは、地方自治を後退させるものであると申し上げ、討論を終わります。

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