2020年の2月会議(予算議会)で相馬ゆうこ区議が一般質問を行いました。ご紹介します。

【質問事項】

1、安心して子育てできる環境づくりのために
①子育て交流サロンの民間の活用も含めた増設と、アウトリーチ型の相談体制の強化の早期実施を求める
②在宅育児家庭訪問事業の早期実施、ファミリーサポートの利用を促すための仕組みづくりを実施すること
③国に保育士の根本的な処遇改善を求めるとともに、区独自の職員加配などで労働環境の見直しに力を尽くすこと
2、教員も子どもも、いきいきと過ごせる学校のために
①小中学校の校長・副校長の40から50パーセント、小中学校の教諭の85パーセントが「教育行政が学校現場の状況を把握していない」と感じていることについて、区の見解を求める
②区が掲げる「1週間あたりの在校時間が60時間以上の教員ゼロ」を実現し、教員の多忙化解消にため、勤務実態の把握と適正な管理、実質的な負担軽減をおこなうこと
③公立の学校教員の「1年単位の変形労働時間制」の導入は、教員のためにも子どものためにもするべきでないと考えるが、区の見解を求める
④子どもの権利が尊重される学校づくりを促進すること
3、医療的ケア児への支援について
①区民へ理解を広げるような取り組みをおこなうこと
②医療的ケア児をもつ保護者同士をつなぐための支援や情報提供をすること
③保育所の受け入れについて、検討状況を明らかにし、早期に実施すること
④区内の医療的ケア児の実態の把握と、要望の聞き取りをおこない、今後の取り組みと計画を策定すべきと考えるが、区の見解を求める

《質問全文》

始めに、安心して子育てのできる環境づくりについて伺います。
区は来年度7月から児童相談所を開設しますが、子どもの命を守り成長を育む責務を果たすため、何よりも必要なことは子育て世帯への予防的支援です。そのためには、親が気軽に立ち寄り相談できる場所が区内にたくさんあることが重要です。相談体制の強化など質的向上とともに、人材や場所など民間の活用も含めた量的な向上がまず必要です。また、子育て支援カウンセラーや保育コンシェルジュなどの巡回によるアウトリーチ型の支援を拡充し、来るのを待つのではなくこちらから出かけていくことも有効だと考えます。区は児童相談所と子ども家庭支援センターを一つの建物に統合して開設としましたが、これにより相談に専門的に対応できる場所が減ることは、残念な決断でした。子育て交流サロンは残りましたが、課題とされる空白地区へのサロン配置はなかなかすすんでいません。子育て交流サロンの民間の活用も含めた増設と、アウトリーチ型の相談体制の強化の早期実施について、区の見解を求めます。
支援が必要な子育て世帯の中には、さまざまな理由で在宅育児をしている、そしてなかなか回りに助けを求められない世帯も多くいます。多胎児世帯などは、一時保育や預かり保育を使いたくても、外出そのものが困難であり、そのための訪問支援が今後いっそう求められます。現在区で行っている訪問支援事業は、対象が限られているものもあり、支援を必要とするすべての世帯をカバーしているとは言えません。訪問支援の強化と拡充のため、「第2期子ども子育て支援計画」で実施が検討されている在宅育児家庭訪問支援事業について、進捗状況を明らかにし、早期実施すること。また、ファミリーサポートについて、初回は無料で使えるなど利用を促すための仕組みをつくることを求めます。区の見解を求めます。
予防的支援という意味でも、保育園・幼稚園等の環境づくりがあらためて重要です。現場の職員が心も体も余裕をもって働くことができてこそ、子どもと保護者の小さな変化を見逃さない、みんなで子どもを守る環境づくりができるのではないでしょうか。いまや保育士不足は全国的な問題ですが、国は根本的な対策である公定価格や配置基準の見直しは行おうとしません。日本共産党区議団が行ったアンケートでは、親から延長保育や休日保育を望む声がある一方で、今の現場ではそんな余裕はない、無理だという保育士の声がありました。区がめざす「子どもたちの笑顔いっぱいのまち」にするために、保育の労働環境改善が必要です。国に保育士の根本的な処遇改善を求めるとともに、区独自の職員加配などで労働環境の見直しと充実に力を尽くすことを求めます。

次に、教員も子どももいきいきと過ごすことのできる学校づくりについて伺います。
現在、公立の学校教員は、給与の4%の教職調整額の支給とひきかえに残業代が支給されないため、時間外労働と長時間勤務が当たり前の状況です。過労死ラインを超える教員は小学校で3割、中学校で6割に及び、精神疾患で休職に追い込まれる教員が全国の公立学校で毎年5,000人、この20年間で約5倍にふえています。教員採用応募者は年々減少、東京都では今年度の応募者が過去10年間で最少の12,000人、2015年から約6,000人も減少しています。
教員の長時間過密労働の改善は誰がみても急務です。しかし、国は教育改革をすすめる一方で、抜本的な対策である教員の増加、少人数学級の実施はすすめていません。授業日数が減っても授業時数は増やされ、教員は増えないまま負担だけが増えているのです。国の来年度予算では、小中学校の教職員定数を2,199人も削減する案が出されています。
荒川区の調査では「教育行政が学校現場の状況を把握していない」と感じている校長・副校長が4~5割、教諭は8割以上にのぼっています。区として、この結果についてどうお考えでしょうか。見解を求めます。

荒川区でも、公立小中学校教員は「過労死ライン」を大きく超えて勤務しており、特に中学校教諭は1週間当たりの在校時間が平均75時間という深刻な状況です。教員の8割が「生徒の悩みや相談に対応する時間が十分にとれない」「特別な支援が必要な生徒への対応が難しい」「授業準備の時間が十分にとれない」「作成しなければならない事務書類が多い」と答えています。
昨年度、区は「区立小中学校における働き方改革プラン」を策定し、「過労死ライン」相当の「1週間あたりの在校時間が60時間」以上の教員をゼロにすることを掲げました。不十分な数字ではありますが、実現のために本気で取り組み、国に抜本的な改善を求めるとともに、区でできる不要不急の業務の削減・見直しが必要です。この際、「子どものため」として行われてきた様々な教育施策、学力テスト、各種検定、コンクール、コンテスト、各種行事などが本当に必要なのか、現場の教諭と子どもの声をよく聴くべきです。教育の現場で行われる新たな試みは行政が押し付けるものではなく、子どもや教諭からこういうことがやりたいのだと現場から生まれてくるものであり、そういう豊かな学校づくりのための支援こそ、本来行政がやるべきことではないでしょうか。毎年区の学力テスト関連で3~5,000万円もの予算を使うより、独自加配など教員の実質的な負担軽減のために使うべきです。また、勤務実態を正確に把握しなくては適切な対応はとれません。出退勤システムの本格的な導入とともに、その適正な管理を求めます。
昨年12月、高知県土佐町議会で「全国学力テスト」を悉皆式から抽出式にあらためるよう意見書が可決されました。テストの本来の目的は調査であり、子どもたちがテスト漬けになっている、教員がテスト対策や分析で疲弊している状況をあらためるべきと訴えています。荒川区としても、区教育委員会が掲げる「1週間あたりの在校時間が60時間以上の教員ゼロ」を実現し、教員の多忙化解消のため勤務実態の把握と適正な管理、実質的な負担軽減を行うことを求めます。

昨年12月の臨時国会で、公立の学校教員に「1年単位の変形労働時間制」の導入を可能にする法改定がおこなわれました。変形労働時間制は、労働時間を1日単位ではなく1ヶ月や1年単位で計算し、「繁忙期」は長く働き、「閑散期」に休日をふやす働き方です。文科省は、休みをまとめてとれるようにするためとして、公立の学校教員に1年単位で適用、学校行事が多い4・6・10・11月を「繁忙期」、学校の夏休み期間を「閑散期」と想定し、「繁忙期」は1日10時間まで、平均週40時間におさまる範囲で労働させることができるとしています。
これに対し、現場の教員からは「夏休み中も部活指導や研修があり、結局休めない」「定時が延びれば、子育て世代は働けなくなる」など、反対の声が相次いでいます。そもそも、厚労省の通知・指針では変形制は「恒常的な時間外労働はないことを前提とした制度」と明記し、文科省もこれを認めています。教員の多くが制度適用の条件とされる残業月45時間を超えて勤務し、時間外労働は恒常化、そもそもの制度の前提がありません。また、夏休み期間に休日をふやせば、現在でもとれていない年次休暇がさらにとりづらくなります。労働基準法の読み替えにより、自治体が条例で定めれば労使協定が不要とされることも大きな問題です。人間は、休みだめのできるつくりにはなっていません。この制度で今以上の長時間労働が固定化されれば、夏休みがくる前に教員は心身ともに限界となってしまいます。 区教育委員会は「教員が働きやすい学校をつくることは、教員と子どもが向きあう時間の確保につながる」としています。この制度導入がそのことへつながるとは思えません。公立の学校教員に「1年単位の変形労働時間制」は導入すべきでないと考えますが、区の見解を求めます。

2015年に性的マイノリティの生徒へきめ細かな対応の実施を求める通知が国から出され、多様性やジェンダー平等を認める声が学校へも広がっています。すべての子どもの権利が守られるためにも大事なことです。昨年、中野区と世田谷区が全ての区立中で、女子がスカートでもスラックスでも自由に選べるようにすることを決めました。男子がスカートをはくことも、相談があれば検討するとしています。荒川区でも、一部の中学校では女子がスラックスを選ぶことができますが、被服心理学の専門家は「区が統一した見解で進める方が、生徒や地域の住民から理解されやすい」と話しています。
また、行き過ぎた「ブラック校則」は子どもの権利を侵害するものです。荒川区内でも、校則で下着の色が指定されている、髪を結ぶ位置を指定されるなどの学校があると聞いています。文科大臣も、子どもの意見を尊重した見直しの必要性を認めており、区でも子どもの意見をよく聴いたうえで見直しの検討をすることも必要ではないでしょうか。
2019年は子どもの権利条約誕生から30年目でした。この間、日本へ幾度も勧告が行われてきましたが、子どもの権利が守られているとまだまだ胸を張って言える環境ではありません。標準服や校則の実態の把握と必要な見直しについて検討することをはじめ、生徒の権利が守られ尊重される学校づくりの促進を求めます。区の見解を求めます。

最後に、医療的ケア児への支援について伺います。
医療的ケア児とは、生活するうえで何らかの医療的ケアを必要とする子どものことです。新生児医療の発達によりその数はこの10年で倍増していますが、医療的ケア児をめぐる問題は多岐に渡ります。相談できる窓口がなく、自治体によってサービスに格差がある。退院後在宅への移行支援がない、保育園・幼稚園は受け入れがなく、通所施設も断られる。親は預け先がないために働くことができない、経済的にも精神的にも追い詰められています。また、兄弟姉妹へのケアや災害時の対応なども深刻な問題です。
区では、医療的ケア児を含めた障がい児支援体制と保育サービスについて検討をすすめるとしていますが、そもそもの支援のための協議の場は設置されておらず、検討中のままです。やっと命が助かっても、社会的な体制が追いつかず孤立している、それが今の医療的ケア児と親たちです。ただでさえ不安な親たちが、これ以上精神をすり減らして頑張らなくてもいいように、他の子どもと同じように、発達に必要な保育が受けられるように、そんな当たり前のことを荒川区で実現しようではありませんか。区内に住む医療的ケア児の親は「自分が直接関わることのない世界のことは全くわからなかったのに、その世界はすぐ近くにあった。わが子のおかげで痛感している。無関心だった自分が恥ずかしい」とおっしゃっていました。当事者でないわたしたちにできることは、知らない世界を少しでも知ろうとすること、そして当事者の思いや要望をよく聴き実現に力を尽くすことだと思います。医療的ケア児について、
1、区として、区民へ理解をひろげるような取り組みをおこなうこと
2、保護者を孤立させないために、医療的ケア児をもつ保護者同士をつなぐための支援や情報提供をすること
3、保育所の受け入れについて、検討状況を明らかにし、早期に実施すること
4、区内の医療的ケア児の実態の把握と、要望の聞き取りをおこない、今後の取り組みと計画を策定すること
以上の4点について、区の見解を求めます。

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